西巷説百物語/京極夏彦 著

毎日少しずつ読み進めようと思ったら昨日読み始めて昨日のうちに読み終えたでござるの巻。なにそれこわい。

絵本百物語・桃山人夜話が元ねたの、巷説シリーズの最新刊。「続巷説百物語」「前巷説百物語」でぽろぽろと匂わせていた西の事件が遂に……と、思って読んでも宜しいでしょうし、思わなくて読んでも宜しいかと。
「これで終いの金比羅さんやで」なんて言われたら、もう御仕舞いなんだと思うじゃありませんか。なら絶対それ出して来るって思うじゃありませんか。騙されちゃあいない、騙されちゃあいないけれど。くやしいっ、でもっ、びくんびくん。
そんな感じ(えっ
林蔵男前すぐる。お龍優しい。又市かっこいい。百介まじオタク。

今回は七匹の妖怪を題材にしています。目次はGoogle検索でも出て来ます。先生の作品は妖怪の見立てが堪らなく上手です。今回も登場人物さくさく逝かれました。そういうの駄目な方は、先生の作品はとことん駄目かも知れません。

久々に巷説シリーズを読んだためか、一話目にして「こう」なりました。爽快なまでのやられた感です。そういえばコレそういう話だったぁぁ!という感じです。掴みとして最高です。本当に久々に脳汁出ました。これは堪りません。

ハードカバーで六一一頁。七話分ですが、それぞれ起承転結に中る四節と、後日譚の計五節に分かれていますので、ワクテカが止まらない方でなければ少しずつ読んでも大丈夫な設計です。筆者は駄目です……睡眠時間を削る質です……。
京極堂シリーズと比べると、今回も一行の文字数は割と少なめな気がします。けれど嬉しいのは百介の蘊蓄語り。蘊蓄をガッツリ読みたい筆者のような方には垂涎物ですね。百介まじ訓練されたオタク。
またこの作品は、登場人物の会話の多くが関西弁という中々な珍品です。筆者は生まれが違いますので、関西弁の正誤はよく解りません。解りませんが、雰囲気は半端無いです。時代小説物もそうした意味で雰囲気も楽しむものでしょうが、もっと雰囲気を身近に感じると申しますか。凄いですね関西弁。

巷説シリーズはミステリとしての頭は空っぽにして読むのをお勧め致します。妖怪に憑かれて、妖怪のまま不思議がってこそ後日譚が楽しめる。それが巷説シリーズだと思います。
とはいえ今回、物語の形式(構成では御座いません)がいずれも同じで「次はこの人が残念な事に……」というのは解ってしまいます。そこを狙った作品では無いためそうしたものかも知れませんが、個人的には中盤くらいまで読むと何となく落ちや仕掛けまで察せられてしまって少し残念。
あと若干、起承転結に中る四節のうちで全ての駒が揃わない感が、何だかなあと思います。所謂ミステリではないのは解っているのですけれど、素直に騙されたというよりは、何だか狡いと申しますか。実際のところ十分ミステリとしても読めますから、その見方で言えば構成が良くない気もします。
……そうして考えると、筆者はものの見事に騙されたの一話目くらいかしらん。六話目はそれでも別の意味で大変清々しかったですけれど。

次は物語では無いですが、「妖怪の理 妖怪の檻」かしらん。蘊蓄あるかな。わくわく。
その前に青空文庫からの紹介が先かしらん。夏目漱石先生の有名所も再読し終えましたし。

そんな感じで。